ヒヨコ大学院生による看護科学の探求

看護師の資格を取り、三年勤務したのちに大学院に入学しました。論文を書きながら、がんサバイバー支援での看護研究者・臨床家の役割について考えています。

Academic Training 2011/09/28 Journal Club

本年度もJournal Clubがスタートしました。
今日が第一回目です。以下の論文についてまとめ、論文の内容や体裁について議論しました。

  • Title :  Differences in Self-reported Attentional Fatigue Between Patients With Breast and Prostate Cancer at the Initiation of Radiation Therapy
  • Author : Merrimam J. D., Dodd M. Lee K., Paul S. M., Cooper B. A., Aouizerat B. E., Swift P S., Wara W., Dunn J., Miaskowski C.
  • Journal : Cancer Nursing 34(5), 2011  

がん治療による合併症 attentional fatigue に関する文献でした。

対象はbreast or prostate cancer の放射線治療前の患者で、

アンケートを取って両群の注意力/認知機能を測定し、比較しています。

アンケートの内容は注意力/認知機能、痛み、うつ、睡眠状況、疾患に関するデータについて


統計分析ではBreastの患者が有意に若かった(p<0.001)ことから、年齢の差を考慮した群間比較が行われています。

  1. 両群のFatigueの重症度の差異の評価(χ自乗検定)
  2. Fatigueとその他の症状との関連(ピアソンの相関)
  3. Fatigueの下位尺度 


について分析結果が説明されていました。


さて、考察ではAttentional Fatigueのレベルが高く報告される要因として、

  • 若さゆえ能力の限界に対するストレス耐性が低い
  • 家事・育児・就労など社会的な役割負担が多い
  • 診断からの期間が短くストレスが多い


等が挙げられました。

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BreastとProstateの両群の患者の特徴には性差、年齢、疾患のステージ、治療内容、診断から治療までの期間などさまざまな違いがあり、

この結果だけでは安易に両群の特徴を述べるのは難しいように思えます。

この論文中にはConclusionが明記されておらず、またこの2群の比較にはどういった意味があるかという点で議論が盛り上がり、様々な憶測が飛び交いました。



Fatigueという症状は身体面のつらさだけでなく、
心理的・認知面でのfatigueが症状の重症度に関わっていると考えられます。


そして今回はAttentional Fatigueという一側面を取り出しています。



いままで先行研究ではFatigueが痛みやうつ、睡眠障害など
他のどの症状と関わりがあるのかや、
どんな治療がFatigueを増強させるのか

という視点で研究されている文献が多かったので、
Fatigueの下位の構成概念が取り上げられた点でとても新鮮でした。

奥が深いぞFatigue。


哲学的になって行きそうで怖いです。
あくまでも目標はFatigueの探求ではなくて症状マネジメント。
看護のゴールは・・・


担当 : 江川